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なるほど法話 海 潮 音
仏教 第24話 位牌
ご家庭の仏壇の前で静かに坐ってみてください。心が落ち着くのではないでしょうか。
日本人は無宗教だといわれる場合もありますが、一方で、ほとんどのご家庭に仏壇があります(その裏で、核家族の家庭には仏壇がないという重大な問題がありますが)。
海外のキリスト教徒が日本には家の中にチャペルがあるといって驚くという笑い話のような話もあるくらいです。
日本人は基本的にはどの「家」も仏壇を持っている点からすれば、世界一宗教的な民族であるともいえましょう。
これを「仏教」というと、「いえ、私は信仰していません」という話になる場合もあるようですが、とにかく、ご先祖さまに対するまごころはどなたにもあるのであって、世界一のまごころを持っているといってもいいと思います。
この、私たちが大切にしていますご先祖さまを象徴しているのが「位牌」であります。
位牌の起源については二説あるようです。
一つは、中国の儒教で先祖祭のときに用いた木主(ぼくしゅ)・神主(しんしゅ)に基づくという説です。
この木主(神主)は先祖や両親の存命中の位官・姓名を四〇センチくらいの栗の木に書いたもので、宋の時代に禅僧が日本にもたらしたと考えられています。
もう一つの説は、神道で用いた霊代(たましろ)が原形であるとする説で、こちらは民俗学者が主張する説のようです。
恐らく両者の習合した産物でありましょう。ただ、現在、日本で行われている葬儀の仕方は中国の禅宗葬法(『禅苑清規』一一〇三年)に基づいていますから、儒教の木主(神主)の影響の方が強いといえましょう。
いずれにせよ、このご先祖さまを象徴します位牌をご本尊さまの次の段におまつりします。
仏壇に向うとき、ご本尊さまよりご先祖さまの位牌に心は向うかも知れません。私はそれでよいと思っています。
ときどき、ご先祖さまはどこにおられるのですか、お墓ですか、お位牌ですか、あの世ですか、といった質問をお受けする場合がありますが、
そんな時、ご先祖さまはあなたの心の中におられます。亡きご両親の思い出があなたの心の中にしっかりとおありでしょう。ご両親はそこにおいでになるのではないでしょうか、とお答えします。そしてお位牌が窓口になるのだと思っています。
私たちがお位牌に向うとき、亡きご先祖さまの思い出がありありと浮かんできます。これが日本人の宗教心でありましょう。次世代にも伝えなければなりません。
お若いご夫婦が都会でお暮らしでしたら、是非、お位牌をおまつりする小さな仏壇を贈って下さりたく願っています。 (平成二十二年五月)
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