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なるほど法話 海 潮 音      


仏教 第23話  三尊仏    

 新しく仏壇を新調する場合、まず本尊様を用意しますが、わたくしたち曹洞宗では「三尊仏」をおまつりします。

「曹洞宗宗憲」に「本宗は、釈迦牟尼仏を本尊とし、高祖承陽大師(こうそじょうようだいし)及び太祖常済大師(たいそじょうさいだいし)を両祖とする」とあるからです。

「三尊仏」のことを「一仏両祖」ともいいます。「釈迦牟尼仏」はお釈迦さまのことでお判りと思いますが、「高祖承陽大師」とは福井県の永平寺を開かれた道元禅師(承陽大師は明治天皇から賜った大師号)のことですし、「太祖常済大師」とは横浜鶴見の総持寺(もとは能登にあった)を開かれた瑩山禅師(常済大師は大正天皇から賜った大師号)のことであります。

曹洞宗ではどのような理由で「三尊仏」(一仏両祖)をおまつりするのでありましょうか。

 お釈迦さまをご本尊としておまつりするのは、お釈迦さまが仏教を始められたからであり、これは当然でありましょう。このお釈迦さまが始められた「正伝の仏法」(坐禅の仏法)を摩訶迦葉尊者をはじめ歴代のお祖師さま方が師から弟子へと親しく伝えられ、中国は宋の時代の如浄禅師に伝えられたものを道元禅師が中国に渡り、如浄禅師から親しく受継がれ、その伝統を日本に植付けられました。

その「正伝の仏法」は道元禅師の『正法眼蔵』をはじめとする多くの著作の中に見ることができます。

しかし、宗教としての仏教は著作物の中にあるのではありません。この点は、道元禅師ご自身がやかましく注意された点であります。

人々が「仏法」を実践してこそ意味があることはいうまでもありません。ですが、道元禅師の時代はまだ機が熟していなかったようです。

これを人々に弘め、曹洞宗という教団にまで育て、全国に一万五千ヵ寺という日本最多の寺院を有する教団となる礎を築かれたのは瑩山禅師であります。

道元禅師の「正伝の仏法」は坐禅を中心とした純粋な仏教そのものであり、これがなければすべては始まりません。

しかし、これを実践する人を育て、その実践する人から感化を受け、その故にその実践者を支えようとする多くの支持者を獲得できなければ、生きた宗教としての意味もありません。

実践者が社会の人々に感化できるということは社会の求めているニーズをわきまえているということでありましょう。瑩山禅師はその点を押さえておられたものと思います。

このような理由でわたくしたち曹洞宗では「三尊仏」(一仏両祖)をおまつり致します。静かに仏壇に向って座り、まず「三尊仏」に手を合わせ、それからご自分の家のご先祖様に手を合わせ、祈りを奉げましょう。 (平成二十二年四月)

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