このページは音声読み上げページです。下の[開始]ボタン(右矢印)を押すと、テキストの読み上げを開始します。([開始]ボタン(右矢印)が出ていない場合はここをクリックしてください。)


なるほど法話 海 潮 音      


仏教 第22話  お盆    

 八月はお盆の季節です。「お盆」は「盂蘭盆会」(うらぼんえ)という仏教行事を省略した呼び方とされていますが、日本古来の行事として、初春と初秋の満月の日に祖先の霊が子孫のもとを訪れ交流するという行事があり、初春のものが正月の祭りとなり、初秋のものが盂蘭盆と習合してお盆という仏教行事となったとされています。

 盂蘭盆会は『盂蘭盆経』(仏教が中国に定着するために儒教思想を交えて作られた中国製の経典の一つ)に出てくる話に基づきます。

 その話とは、釈尊の十大弟子の一人である目連尊者は神通力にすぐれ、亡き母が餓鬼道に堕ちて苦しんでいるのを見ました。釈尊に亡き母を救う手立てをうかがったところ、インドでは雨季(四月中旬から七月中旬)の三ヶ月間、托鉢をしながら遊行する野外での修行ができませんから、お寺の中で坐禅を中心とした厳しい修行期間が設けられています。その最後の日(七月十五日)に修行者たちに労をねぎらうご馳走を施せば、その大きな功徳の力によって亡き母も救われるであろうとの答でした。目連尊者はその通りに行ったところ亡き母を救うことができたということです。

 お盆とは、インドの仏教が説く修行者への布施は大きな功徳があるという教えと、中国の儒教が説く親への孝を大切にする教えと、そして日本の祖先の霊が子孫のもとに年に二度帰ってくるのでそれを真心をもって迎えるという教えの三つが一つになり、日本人の心の底まで定着したものといえましょう。

 ところで、近年の地球温暖化現象のせいでしょうか、お盆が年ごとに暑くなってくるような気がしてなりません。今年も猛暑日のお盆でしたが、昨日無事に終わりました。ホッとしているところです。今日(十六日)は雨模様で久しぶりに真夏日(最高気温が摂氏三十度以上の日)から解放され、気分だけでなく、気温の上でもホッとするおまけがつきました。

 お盆には都会に出ている若者たちが帰省して、家族そろってにぎやかにお寺にお参りする姿が目に付きます。日中を避けて涼しくなった夜にお参りが多いので、お墓全体を照らす水銀灯が当山の自慢です。以前と違い最近はお盆の十三日にお参りが集中しているようです。まずご先祖様にご挨拶してからどこかに遊びに行くということなのでしょうか。お寺で行列ができるのは八月十三日ぐらいかも知れません。年に一度では情けなくもありますが、大切にしたいものとも思っています。 (平成二十年九月)

音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。